なんで気付かないフリばかりしなくちゃ ならないんだろう



















Hide-and-seek



















マスカラを塗って

睫毛に上を向かせる。






チークを使って

顔を明るく見せる。














鏡をぱちん、と閉じてそのまま鞄に滑り込ませる。

オレンジ色の爪でジッパーを閉め、乱暴に持ち上げて家を

出た。携帯の時計を見ると――――8時55分。


ラッシュのピークよりはだいぶ空いた電車に乗り込むと、慣

れたリズムでガコン、と動き始めた。気分が悪そうにドアにも

たれかかり、両腕で抱えた鞄に顔をうずめた。

10分ほどして、再びガコン、という音と共に人のゆるい波が

出口へと向かい、それに流されるようにホームに降りる。

駅の目の前に、其の、静まり返った学校はあった。



授業終了まであと10分ほどある。校門をくぐる前に、駅の横

にあるコンビニに寄り、紅茶を買って時間を潰した。

校舎の外の階段に座り込み、特に何を考えるでもなく紅茶を

飲んでいるとチャイムが鳴った。待っていました、とばかりに

鞄をひっ掴んで勢いよく立ち上がる。





「―――ナミ、遅刻。寝坊?」

ギィ、と音を立てて椅子を引いた。

「違う。眠れなかっただけ。」

「・・・よく意味がわかんないんだけど。」

「次数学?」

「うん」

大して重くも無い鞄から教科書やノートをバサバサと取り出し、

さっきの飲みかけのペットボトルも置いた。

「眠れなくてボーっとしてたら8時になってたのよ。」

ノートをめくりながら予習範囲を確かめる。

「相変わらず急いだ様子無いね。メイクもバッチリだし。」

「スッピンで来るほど急いでも仕方ありませんから。」

眼鏡をクイと上げる動作をして、小さく笑い合った。









「ナミさん」










ざわめいている休み時間。

何もわざわざ来なくたって、いいじゃない。







「辞書貸してくれる?次英語なんだ」

「・・・はい。」

無造作に机の中から取り出した1冊の辞書を手渡す。

「ありがと。じゃーまた次の時間にね。」

渡した英和辞書を小脇に抱えてその男は教室を出て行く。

周りの女子の視線を集めながら。―――歩くだけで目を引く

人なんだから、軽々しく私のとこなんかに来ないでよ。

「また来たね、サンジ君。」

「ああ・・・」

「実は1限も教室覗いてったんだよ。ナミが来てないから帰っ

たけど。」

「へえ・・・」

「・・・・・・・」



その続きは言わないでよ。言ったら怒るわよ。



「――ねえ、やっぱりサンジ君てナミのこと」

「やめてよ。何度も言うけど、そんなこと有り得ないでしょ」































何で自分から否定しなくちゃならないのよ。








いつからか浮かび上がった噂

















ほんとは凄く嬉しかったのに。

















今まで出所は全て踏み潰してきた。

今度もそう。誰にも私のホンネは教えちゃダメ。

仮に噂が本当だったとしても、私は応えちゃダメなんだ。























応えたら何人の子が傷付くの?


















そんな理由を通すほど私はお人好しなんかじゃないよ。






知らない子を傷つけるだけじゃない。


























目の前でニコニコ笑ってるお人好しのアンタを傷つけることなんて出来ないから。











Next.






7/27
ナミとサンジ以外、人名は一切出さない方向で。(笑)
今回は「イチゴ・・・」みたく、結構さくさく書けてるかんじ。連載がんばろう。


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