煙草の煙じゃ



罪は洗い流せない。





ゴ、セブンスター 




薬品独特の香りで目が覚めた。


無用心に開け放たれた保健室の窓から、僅かな煙がナミを誘う。

存在の、合図。


「ねえ」

予想通りの金髪。特に驚いた素振りも見せず、ナミをゆっくりと見上げた。


「となり、いい?」

「どーぞ。」

窓を飛び越え、サンジの隣に腰を下ろす。

予想以上に太陽の光が差し込んで、ぽかぽかとして気持ち良かった。

今にも夢の続きを見そうである。



「また保健室?

     案外ビョージャクなんだな。」



煙草を咥えながら笑う。

「違うわ、ただの仮病。・・・っていうか、今日はアンタに会いに来たのよ。」

少し俯いて話したら、サンジはさも意外、といった様子で目を丸くした。

その後すぐにいやらしいヘラヘラした笑い顔になったから、何か勘違いして

いるに違いない。

全く迷惑な話。


「勘違いしないでよね。別にアンタが期待するような理由じゃないわ。」




「ヘイヘイ」と少し残念そうに頭を掻いて、

視線を真っ直ぐに戻した。




「そういえば

    この前話さなかったよな、理由。」



分厚い煙が目の前を曇らせる。


「そう、それよ。全く この間は何」

ようやく当初の問題に話を繋ぐ。

「自分で言いに来たくせに、結局何も言わずに出て行くし。」

「気になった?」


満足そうな、顔。


「当然よ。・・・そりゃあ要らないって言ったのは、私、だけど。」


口ごもるのがくやしい。


「そりゃよかった。」

「何がよ」

「キミがあんまり“興味ナシ”って態度とるからさ、ちょっと意味深なことでも

言って気を引こうと思って。」

今度はナミが目を丸くした。

が、その後はサンジと逆。

すぐに口をとがらせる。

「何ソレ、策略?」

「まあね」

少し腹が立ったけれど、こんなおちゃらけた男の冗談、いちいち真に受けて

いたらキリが無い。怒る気も失せた。


実際、策略に嵌った自分が居た。




「・・・さっきまで、ここに居なかったでしょう。」

「保健のオバサン、うるせェから。」


ナミの脳裏に先刻の白衣の女性が浮かぶ。


「たしかに。」

キツいフレームの眼鏡を思い出して苦笑した。

「でも私の仮病をすんなり受け入れてくれたわよ?」

「それは演技が上手いからさ。」






こんな、さりげない所で


女を褒めるのも忘れない。


大したフェミニストだこと。









「まあ前でも怒られたけどな。」


感心しようとした矢先


「ロビン先生?」







サンジの青い瞳が


更に深くなるのを感じた。





ニセモノ






カラーコンタクトのくせに。







「そろそろ話そうか、理由。」













煙草を咥えて黙らないで。



主導権はアンタなのよ。














ナミの真っ直ぐな疑惑の色の残る視線に



サンジは煙草の煙で返事をした。




























この風が止むまで、待ってもらってもイイ?


































笑わないで



















これから聴かせる





























情けない昔話。



NEXT


9/25
そろそろ、クライマックス。



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